『ジョニーは戦場に行った』 外意識と内意識

2016.03.09

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 学生時代、毎週必ず映画を1本観る、と決めていた時期がありました。
 
 いわゆる名画座と言うのがあって、1週間ごとにかかる映画が変わるのと、何曜日だか一日だけ入場料が安い日があったので、学生にとってはありがたかったわけです。
 
 そんな時期に観た映画で、『ジョニーは戦場に行った』(原題:Johnny Got His Gun)というのがありました。
 

 第1次世界大戦に従軍した20歳の兵士ジョニーが、よりによって戦争終結の日に、爆弾の炸裂で手足全てと顔を吹き飛ばされ、目も見えなくなり、耳も聞こえず、しゃべることも、匂いを嗅ぐこともできなくなって、文字通りダルマのようになってベッドに横たわっている映画でした。 唯一残った感覚は、触覚だけという有様です。
 
 当然、野戦病院に運び込まれた時に彼の意識はなく、このまま亡くなった方が、本人の為だ、と誰もが思うような状況でした。
 
 肉体に閉じ込められ、囚われたジョニーの魂が主役、という映画です。 もう、これ以上暗い映画は作りようがない、と思えるような状況です。
 
 医師も彼を生ける肉塊としてだけ捉え、外から見たら絶望的な状況にもかかわらず、ジョニーの意識は冴え渡ります。
 
 余計な感覚からのインプットがないだけに、彼の意識は逆にグングンと冴え渡っていくのです。
 
 普通に考えれば何とも暗い映画に思えるわけですが、最初は何でこんな映画を観に来てしまったのか、と後悔さえしていました。 しかし、ジョニーが唯一動かせる頭をモールス信号のように動かすことで、コミュニケーションし始めると、暗い映画の気分が吹き飛び、ジョニーの冴えた意識の清澄さが心地よくさえ感じられたのを覚えています。

 

 私たちの感覚には、外意識と内意識があります。
 
 外意識は、五感を通して捉える自分の周りの世界に対しての注意と観察です。
 
 一方、内意識は自分の身体の中に向けられた注意の意識です。
 
 一定の長期間に渡って意識のない植物症や植物状態になった人でも、内意識を持っていることがあるそうです。
 
 ましてや意識のあるジョニーにとっては、外意識は皮膚感覚だけですから、内意識がグングンと冴え渡ります。
 
 実は、この内意識が自覚的に大きくなることが、いわゆる大我意識の発達に繋がっていきます。
 
 この国土において戦争がない、今の平和な時代に暮らす私達の幸運は、日々の静坐を通して、この内意識の拡大を通して、大我意識を発達させていくことが出来ることです。
 
©天空庵

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