2017.05.25
インドに行くとどこでもチャイで一服する姿に出会います。
紅茶に沸かした牛乳を入れ、香辛料と砂糖で甘くした一杯は、暑い場所での憩いのひと時です。 香辛料は場所や店によって違ってきますが、生姜、カルダモン、シナモン、クローブなどが一般的でしょうか。
当番は最近インドはケララ州の田舎に滞在しましたが、朝は道端でのチャイの一杯で一日をスタートさせていました。 ミルクティーと言えるわけですが、一番のご馳走は、その日の朝に搾りたての牛乳で作られる事。
私たちが普通に手に入る牛乳は、色々と手が加えられたものであることは、以前に牛乳にまつわるお話として当番日記で書いたことがありました。
これまでインドを旅した方は、町の中を牛がのっそりと歩いている姿に最初は驚くという体験をされたかと思います。 そういう牛にはたいてい持ち主がいます。 趣味で牛を飼っているのです。 今回滞在したような田舎ですと、牛は神様の乗り物として大事にされ、本来の草を食んで、放牧されながら、大事にされてのんびりと過ごします。 また、妊娠中の牛から搾乳することもありません。 一般に産業的に飼育される牛は、牛舎で生活し、穀物系の飼料を与えられて育つようです。 農村でのんびりと趣味で飼われている牛からは、違った波動の乳が出来てくることでしょう。 毎朝絞った牛乳を、村人達はオートバイや自転車に乗って、仲買人のところへと配達します。
乳脂肪分を分解する『ホモゲナイズド』もされず、超高温と言わず、低温度でも殺菌を施されていない生乳です。 それを一般家庭の主婦が小分けにされたものを買っていき、チャイ屋さんは、その牛乳を作ってチャイを作ります。
その生乳を買って、自分で沸かして飲んでみると、牛乳ってこんなにサラッとしたものだったんだ、と言う感想が出てきます。
では、一般家庭の主婦の方は、生乳を買ってどうするか、と言いますと、このケララ地方の田舎では、それからバターミルクと呼ばれるヨーグルトを作ることが多いそうです。 牛乳を沸かして冷ました後に、ヨーグルトの種を入れて一晩置きます。 それで出来たヨーグルトを攪拌して乳脂肪分を取り除いて『バターミルク』を作ります。 取り除いた乳脂肪分からバターを作り、さらにそれを煮詰めてギーを作ります。
因みにアーユルヴェーダの施術で、おでこに液体を垂らす『シロダーラ』と呼ばれるものがありますが、その液体にこの『バターミルク』が主成分として使われることがあります。 まずは、『タッカラダーラ』と呼ばれるこのバターミルクがベースの液体での施術を数日受け、その後にオイルを使ったシロダーラを受ける、と言うケースが多く行われています。 勿論、これは一人一人の体質ごとに専門医が判断して、処方する事になります。
ところで日本人は乳製品に昔から馴染んでいたか、というとそういうことはなかったと思います。
アシュワガンダというアーユルヴェーダでよく使われる薬草があります。 スーパーハーブと言われることもあるとか。 これをパウダーで服用する時には、一般的に牛乳に入れて沸かして飲むように医師は処方されます。
ところがインドから来ていただき、天空庵で昨年ワークショップを開いていただいたアシュタヴァイジャの先生は、日本人の我々に対してはもしアシュワガンダを服用するのであれば、牛乳でなく水に溶かして飲むことをお勧めされていました。 日本の人の消化システムは、牛乳との親和性がそれほど高くない、という判断からのことだったそうです。
アーユルヴェーダでも、高く奨励される牛乳ですが、環境と食生活の違う日本人がそのままストレートに適応して良いかは、よく考えたほうが良いのだと知らされたことでした。 環境の違いとは、インドと違って、乳脂肪分を切り刻まない無加工の生乳(ノンホモ)が手に入りにくいこと。 食生活の違いとは、味噌や漬物といった日本型発酵食品が中心で、昔から乳製品をとってこなかった、という事実。
それでも朝のチャイには、その日に絞った牛乳が心と体を芯から温めてくれるパワーがありました。