2018.03.21
足元を気にしながら岩場つたいに歩くこと約5分。 小さな岬を回るとそこにはシュールな景色が広がっているのでした。
大きな両手で抱きかかえられたように周囲を断崖絶壁に囲まれ、馬蹄形をした赤い砂のビーチが、荒波に洗われるようにして出現するのです。 思わず、異次元に迷い込んだような錯覚にとらわれる、未知の空間がそこには広がっているのでした。
日の出前の朝焼けの時間帯。 まだ足元は暗いので、慎重にゴツゴツした岩を降りて、海岸に下り立つと持ってきたゴザを広げて座る場所を確保します。 岩場に打ち寄せる波の向こうには東の水平線。
そう、昇る朝陽に向かって瞑想しようと、この砂浜にやってきたのでした。
日の出の時刻を調べ、その約30分前から静かに瞑目の時間に入ります。 そして、静謐な時間の中にいつの間にか意識が溶けこみ、静かに目を開けます。 そこには水平線からわずかに顔を出した大きな日輪が、オレンジの光を天に向かって輝き放っているのでした。
空海は室戸岬の洞窟で瞑想していた際に、口に明けの明星が飛び込んできた体験で大悟。
一休禅師は、夜の琵琶湖に船で漕ぎ出して座禅を組み、暗闇に鳴くカラスの声に悟った。 カラスは見えなくともそこにいる、仏もまた見えなくとも心の中にある、と。
体得すべき体験は、来るべき時が来るとやってくる。 私たちに出来ることは、そのような体験と出会えるような生活を続けること。
それを体得した場所というのも偶然かも知れない。 しかし、体得しやすい場所はある。 夜明け前のこちらの赤い砂の浜は、そんな気にさせてくれる場所の一つです。
ここはハワイのマウイ島の東にあるハナという人口1200人ほどの小さな村。 観光で訪れる人も少ないので、老舗の平屋建てのホテルが1軒しかなく、他は民泊になってきます。
そのホテルの敷地の脇を回り込むように岩に打ち寄せる波しぶきを眼下にみながら5分ほど歩くと、レッドサンド・ビーチというくだんの馬蹄形の海岸に到着します。 クリントン大統領夫人も現職の頃に年配のお母さんを連れて、このビーチを訪れているのだとか。
朝の瞑想で良い気分になってホテルに戻ると、ロビーの脇に居心地の良さそうな、小さな図書スペースがしつらえてあるのでした。 どんな本があるのかザッと眺めていると、日本語の本が一冊、目に飛び込んできました。
手にとってみると『アロンなの〜』というタイトルの本でした。
表紙をめくるとそこには、著者の自筆のメッセージが次のように書かれてあります。
『夢のような4日間をこちらで過ごさせていただきました。 また、是非こちらに伺います。』
なんだか不思議な柔らかさのある本で、ページを繰るたびに引き込まれる面白さがありました。
”アロンなの〜”とは、著者の家に日常的にやって来る異星人ちゃんが、自分のことを呼んでいる呼び名だった、というタイトルからして、ぶっ飛んでいます。
その”ペルメウス星”から来たアロンちゃんと、地球人である著者の周囲の人たちとの、交友録がそこにはサラサラと書かれていました。 疑いもなく、『自然にそんなこともあるんだ』と思わせてくれる、力の抜けた楽しいやりとりがそこには綴られていたのです。
早朝に昇る朝日からのエネルギーをたくさんいただくと、こんな出会いが待っているのですね。