医心方(いしんぼう)

2016.06.25

このタイトルを見て何かご存知の方は少ないかも知れません。

当番もつい最近まで知りませんでした。

国宝 半井家本『医心方』

国宝 半井家本『医心方』

隋唐時代以前の200以上の文献から病気の治療法、養生法、医師の心得などを抜き出して、症例別に編集された日本最古(平安時代)の医学書だとか。
中国から伝わったそれらの書物を縦横無尽に読みこなし、同じテーマの内容に関する部分をまとめ上げてあります。

全30巻と東洋医学の源流ここにあり!というような圧巻の書物ですが、よくぞ現存していた、という代物です。 ところが、内容的に秘方であるが故にわざと文字も難解にしてあるのだとか。 それをコツコツと一人で40年かけて現代語に翻訳した方がいたとか。

その中には、例えば寝るときに頭をどちらに向けて寝るか? 『千金方』という中国唐代の文献からの引用で、次のようなくだりもあります。

『春と夏は東向き、秋と冬は西向き。 北枕はしない』

これはインド古代建築のヴァスツでも、寝るときの頭の向きは東か西か南とされるので、合致している。 ヴァスツでは、季節との関連性を聞いたことはなかったが、こちらはそこまで言及している。 このようにはっきり決めつけてもらった方が、こちらも迷わなくなってありがたい。

『いつでも寅の日に手の爪を切り、午の日には足の爪を切るようにすること』

寅の日は十二支なので、12日に一回巡る金運招来の吉日。 午の日はというと、こちらは十二支の7番目で、同じく12日に一回巡る。

因みにインドのジョーティッシュ占星術にも、爪を切らない方が良い日というのがあるが、こちらは月齢からきている。 切るのを避けた方が良いとされるのは、月齢で8日、9日、14日、新月と満月。 それと曜日では、金曜日と土曜日は避けた方が良いのだとか。

『月が東井に宿る日に、洗髪や入浴をすると、無病息災で長生きする』

この東井に宿る日は、やはりジョーティッシュではロヒーニと呼ばれる第4番目の月宿(ナクシャトラ)に当ります。 

『気を大切にする人間は、たとえ仙術を知らなくとも、気を適切に養えば、だいたいにおいて120歳の寿命を保つことができる。 また仙術の心得があるものは、240歳の寿命を得ることができる。 さらに道を極めれば、480歳まで生きることが可能だ』

これは、700余歳まで生きたという古代中国伝説の仙人である彭祖(ほうそ)様のお言葉。

『気は鼻から体内へ引き入れ、口の中から吐き出す。 決して逆にしてはいけない。 逆にすると体を害する。 気を服するには、仰向けに寝て枕を下げ体を平らにする。 握固と言って、四本の指で親指を中に入れて固く握る。 両足の間は15センチほど空け、両肘も伸ばして体から15センチほど放す。 体の力を抜いて呼吸を続ける』

琴バウアーでやるようなガオーのポーズを天空庵での体操でやりますが、手はこの握固のように親指を中に入れた方がいいですね。 赤ちゃんに握りこぶしがそうなっているはずです。

『毎朝、起床したらすぐに顔を真南に向け、両手を膝上に伸ばし、心眼で気が頭のてっぺんから入り、足裏の湧泉に降りてゆくのを観ぜよ』

天空庵での呼吸法でも、これに似たのを時々やりますね。

『導引して体内の気を調整し、養生する場合には、1日を三回に分けてこれを行うこと。 午前5時から午前7時。 午前11時から午後2時。 午後5時から午後7時の間。 導引する時には、まず清潔であることを心がけよ』

『朝、起床したら東に向かって座り、両手をこすり合わせて熱し、その手で額の上から頭上にかけてマッサージする。 両手を交差させて両耳の端をつまみ、上下させる。 これをすると難聴にならない』

この動作は、インドで103歳のヨガの先生が自分が毎朝やっているルーチンを教えてくれた時に、登場していました。 この医心方の中にも、これは婆羅門の法である、という記述で登場。 要は、これはインドから中国に伝わってきたものです、と言っている。

これら30巻は情報過多でもあり、これらを学んでいるうちに人生が終わってしまわないか心配となる。

必要な知識には出会うと信じ、出会ったものを実行していく。 それが限られた時間の中で、日常生活と折り合いをつける方策なのかと思う。

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